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2022.06.1コラム

グリーフケアという言葉の基本的な意味は『死別の悲嘆にある人々をケアする事』です。

この言葉は、心理学、医療従事者、死別経験者……たくさんの方々によって使われ、今日までの日本社会に浸透し、拡大していきました。

 

一口にグリーフケアと言ってもその内容は多岐にわたりますので、今回は『死の影響、心の影響』についてお話させて頂きます。

 

心の状態は身体へ大きな影響を及ぼす事は周知の事実です。精神医学では実証的に知られ、悲しみが原因となり、身体的な病や死亡にいたる事例が数多く報告されてきました。

 

精神科医である小此木圭吾(1930-2003)が調べた所、配偶者を失った男女の、パートナーの死別から6か月以内における死亡率は……同じ年代の配偶者を失っていない男女と比べ、40%も高かったのです。

また、その死亡原因の四分の三が心臓疾患であり、ほとんどが心筋梗塞でありました。

 

この事実を知った小此木は次のように述べています。

 

『そもそも心臓はもっとも直接的に感情生活の影響を受ける器官である。対象を失った悲嘆、一人残された寂しさ、孤独に生きる不安と緊張、不運な運命への怒り、

こうした様々な感情の高まりが、血圧や心臓の働きに影響を及ぼし、血液の化学的組成を変えて心臓病を誘発する可能性がある。悲嘆の中で心の中のストレスを解消する気持ちから

喫煙・飲酒量が増え、寂しさ、虚しさをまぎらす為に、急に多食になり、肥満するといった生理的変化が影響する可能性もある』

 

またこういった変化は死別のみに起こりうる事ではなく、例えば――

 

①仕事を失う事

 

②体の一部の機能を失う事

 

③住み慣れた家や土地を失う事

 

④離婚等で家族と離別する事

 

⑤人生の目標を失う事

 

――――等々

 

多種多様な理由により、人は悲嘆し、グリーフケアを必要とするのです。

そして悲嘆は、人間のみに限った話ではありません。動物達も死を悼みます。

動物行動学、自然人類学者のバーバラ・キングは猫、犬、馬、イルカ、ゾウ等の多くの動物達にも悲嘆の行動が見られると提唱しており、

著作『死を悼む動物たち』なかで、例題として老いた雌鶏と若い雌鶏の話を記述しております。

バーバラによると、若い雌鶏は老いた雌鶏ためにエサを集めたり、寝場所を整えたりするという世話をやいていたが、やがて老いた雌鶏が息を引きとると、

若い雌鶏はエサを食べるのを止めてしまい、遂には若い雌鶏も衰弱して亡くなってしまったとの事です。それは老いた雌鶏が亡くなってから、2週間とたたないうちであった……

 

またバーバラ以外にも同様の観察がイタリアでもされており、その内容は2匹の愛犬の内、1匹が亡くなった際、残された愛犬はどのような行動を取るのか?という物でした。

これは400人以上の人々にも協力してもらい、その結果は克明に記録されました。

内、全体の86%の残された愛犬が、なんらかのマイナスの行動を取る様になり、

この86%の内の32%の愛犬が、このマイナス行動が2か月~6か月続いたと報告され、25%の愛犬はマイナス行動が6か月以上続いたとの事でした。

 

このマイナス行動も実に様々であり――

 

①以前よりも構って貰う行動が増える

 

②遊びに行く時間の減少

 

③そもそも活動時間の減少

 

④眠る時間が長くなり、起きている間は何か怯えるようになった

 

⑤食事摂取量が目に見えて減った

 

⑥くんくんと鳴いたり、吠える事が増えた

 

――以上の様に報告された訳ですが、この結果はバーバラの提唱した『動物にも死を悼む能力がある』という説を大いに後押しする物であり、

動物も人と同様に死を悼む能力があるというのは、最早、疑いようもない事実でしょう。

 

このように、人にも動物にもグリーフケアが必要な昨今。

悲しみ等の感情の表現や動きを正常なものとして受け止める必要があり、グリーフワークの重要度もますます高まっています。

 

皆様も、悲嘆にくれてどうしようもない時は一人で抱え込まないで下さい。

親しい方や、信頼している方等にそのお気持ちをお話下さい。また同じ様な悩みを持つ方々どうしでお話する事により、心の平穏を取り戻す事にもつながります。

 

現代社会では様々な別れの形があります。こうだという形に固執せず、事情にあったグリーフケアが必ずあります。

 

また今回この文章を作成するにあたり、グリーフケアの理論と実際(島薗進・監修/粟津賢太・著)を参考にさせていただきました。

 

かずやコスメディア 高木


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